番外編SS「池照家のゲーム大会」


オ「ま、何だ。日曜なのにたまたま・・・たまたまだが、みんな暇だ。しかも、エマちゃんとレオンハ

  ルトも暇って事で・・・どうだろう?今日は一つ、みんなで遊べるゲームとかしてみるか?」

ト「イイ歳した男等が『ゲーム』かよ?しかも日曜日・・・」

め「あ、一応エマちゃんと私も居ますんで、男性だけでは・・・」

めぐみが挙手した。

ト「エマはともかく、お前の場合は性別の問題じゃない所に問題あるだろう。ったく、おこがましいっ!」

「コラッ!」

オリバーがトムの悪態を叱った。

ト「ま〜たそうやってアンタはめぐみを庇う訳だ。デキてんじゃねーの、実際?」

トムが意地悪そうな顔で長男とめぐみを交互に見つめた。

レ「・・・トム君、それ以上言わない方が君の為ですよ?傷付くのはト・・・」

オ「トム、ここだけはハッキリさせておく。俺達は『デキて』無いっ!

め「そうですよ〜、トムさ〜ん」

トムは「フンっ!」と不貞腐れた。

この男が何に対して「面白くない」かを判断出来るのは、ここに置いては双子とレオンハルトだけだ。

トムはあれだけカノジョが居た筈なのに、本命に対しては幼稚園児並みの対応しか出来ないようだった。


レ「まぁまぁ、トム君。楽しそうじゃありませんか、このメンバーでゲームって言うのも。僕はお兄様

  の提案なさったゲームに参加しますよ」

ダ「僕もー!」

ル「僕もするー♪ゲーム大好きー♪」

ト「・・・足を一番引っ張りそうなヤツこそがこうなんだよな」

ル「え?」

ト「何でも無ぇよ」

トムは説明を始めると面倒になりそうなので、その件に関して逃げた。



め「あれ、そう言えばジェームズさんどこだか?」

ジ「ここ!」

ジェームズがちゃぶ台の向こうの方で手をヒラヒラ上げた。

ジェームズは畳にひっくり返っていた。

ジ「俺、昨日『遅番』で徹夜だったんだ。少し寝る。ゲームは俺抜きでやってくれ」

オ「それはダメだ!池照家は基本何にも全員参加が基本だ、忘れたか?」

ジ「こう言う時に『長男の権限』使うのやめて貰いたいね、兄貴・・・」

オ「ほら、起きろ!メンバーもお前が抜けると人数が合わん!」

確かに、ジェームズが抜けると奇数になってしまう。

オリバーはどうやら紅白戦にしたいらしい。

ジェームスはかなりウトウトしていたが強引に長男に叩き起こされ、渋々ゲームに参加となった。


め「渋いお茶でも入れてきましょうか、ジェームズさん」

ジ「頼むわ、めぐみちゃん。超大盛りで」

め「はい〜」

エ「フン!お茶くらい私だって入れられるわ。簡単な事よ!」

エマはめぐみに対抗意識を燃やした。

エマも、本人が未だ気付いて居ない所で「大人」になっていたのだ。

実はさっきからずっとチラチラジェームズを気にして見て居たのだ。

オ「あ、お茶なら俺も欲しいな」

レ「あ、すみません。じゃ、僕も」

ト「俺、紅茶にしてくれ」

エ「あ、じゃあ私も紅茶!」

ダ「じゃ、僕コーラ!」

ル「あのね〜、僕はカルピス!」

オ「生憎だがコーラとカルピスは却下!それは店の商品だろ!」

ル「チェッ!」

ダ「じゃ、僕牛乳でいいや」

ル「じゃ・・・僕はやっぱりカルピス」

オ「お前なぁ〜・・・」

オリバーが馬鹿な四男を睨んだ。

め「いいじゃないですか、オリバーさん。ルパートさんにカルピス上げましょう?私のバイト料から引いてください」

オ「めぐみちゃんが払う事無い」

ダ「じゃあ、僕もやっぱコーラ欲しい!」

オ「いいぞ。けど、お前ら二人は出世払いな」

ダ「・・・僕等からはお金取る気なんだ。ま、いっか。オッケー」

ル「『出世払い』って何?」

ダ「出世したら返すお金の事だよ?」

ル「何だ。じゃ、僕出世無理だから助かった・・・」

ルパートがホッとした顔をしている。


オ「今から諦めてどうする!」

ト「・・・兄貴、本気言ってんのか?コイツが出世する訳無ぇだろ?うちで一番しないね、コイツは」

トムがルパートを見つめてフフンと笑った。

ル「するモンねー!」

ト「おお、言ったな!んじゃ、出世したら俺にバイクプレゼントしろ!」

ル「いいよ」

ダ「大丈夫なの、ルパート・・・トムとそんな約束して?」

ル「大丈夫だよ、ダン。だって僕多分・・・」

ルパートはダニエルにだけ聞こえるように、彼の耳元で「ホントは出世しないから」と呟いた。

が、勿論みんなに丸聞こえだ。

ジ「・・・話の堂々巡りだな」



め「んじゃ、私飲み物用意して来るんでグループ分け適当にして置いてください」

オ「分かった」

めぐみが出て行ってからメンバーは二組に分けられた。

Aグループは「オリバー、トム、エマ、ルパート」。

Bグループは「ジェームズ、ダニエル、めぐみ、レオンハルト」。

トムはその組み分けに何となく面白く無さそうな顔だ。


オ「どした、トム?問題あるか?」

ト「別に。ただ、俺達のチームの方が不利じゃ無ぇかなって、な。『世界最高レベルの馬鹿』が混じってるから」

ル「え、誰だろ?」

ルパートがキョロキョロした。

ト「・・・幸せな脳みそだぜ」

エ「大鋸屑(おかくず)しか入って無いのよ、コイツの頭には」

大鋸屑男にはエマの言った意味さえも分からなかった。

ダ「残念だなぁ、ルパートと別れちゃったよ・・・」

ル「だね〜、ダン。一生懸命戦おうね〜」

ダ「うん!」

めぐみが色々な注文を手際良く用意し、それぞれに与えた。


オ「確か棚に煎餅があったな」

オリバーが立ち上がった。

レ「あ、僕もそう言えばお土産を持って来ていたんです。忘れてました」

ト「・・・またバラの花束とかじゃねぇだろうな?」

レ「今日は違います」

レオンハルトは後ろから紙袋を出した。

箱には「ドラえもんの人形焼き」と書いてある

ダ「わっ、可愛い♪」

ル「わーい、美味しそー♪僕が好きなヤツだー☆」

ルパートはドラえもんの人形焼きを食べた事もない。

が、即座に「可愛い=好き」に変換された。




ル「はい、エマ」

ルパートがエマに「スネ夫」を与えた。

エ「どうして私に『スネ夫』くれる訳?」

ル「だって。エマって何か『スネ夫』だし」

エ「何ですって!わたしはコレでしょーが!『しずかちゃん』か『ドラミちゃん』よ」

エマが「しずかちゃん人形焼き」と「ドラミちゃん人形焼き」を手に持った。

ト「『ドラえもん』はめぐみだな・・・ブハッ♪

トムは「ドラえもん人形焼き」をめぐみの顔の横に翳して笑った。

め「私、ドラえもん好きですよ〜。何でも出来るし。のび太さん助けて上げられるし」

ジ「その件で言えば・・・『のび太』はむしろお前だな」

ジェームズがトムに「のび太」を与えた。

ト「何でだよ!」

ジ「お前結構めぐみちゃんに色々助けて貰ってんじゃん。ほい、婆さん」

ジェームズがオリバーに「ジャイアン」を上げた。

オリバーは手の中の「ジャイアン」をジッと見つめた。

オ「・・・どういうフリだ、これは?」

ジ「意外と婆さんは我が家に置いて『ジャイアン』だって事さ」

「何だとっ!」

ジ「ほ〜ら」

みんながそれを笑う。

ジェームズは「頼れる兄貴」的なニュアンスも考え与えて「ジャイアン」にしたつもりだったが、本人にはその主旨は伝わらなかったらしい。



流石は池照家。

元々はゲームをする予定だったのに人形焼きとドリンクで充分盛り上がり、結局ゲームの事は忘れ去られた。


チャンチャン♪




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