番外編SS「Dr.ハインリッヒ診療所・・・続き」
「どうぞ〜!」
「失礼します・・・・・・」
部屋からの医師の呼び掛けに、レオンハルトが診察室に入った。
「今日は趣向を変えて、『俺達』がお前を診察するからな」
「・・・・・」
聴診器を構え、白衣姿のオリバーがニヤリと不敵に笑った。
どうやら、以前自分がレオンハルトに診察された事を根に持っているようだ。
オリバー横には、次男のジェームズ・三男のトム・四男のルパート・末っ子のダニエルも
同じ格好で医者面して座っている。
どうやら、「五人の医者」が同時に診察してくれるらしい・・・・・何ともメンドーだ。
真面目な顔をしている三人の兄達を余所にダニエルとルパートは、既に互いのシャツの中
に聴診器を入れ合いっこして、それぞれの心臓の音を聴いて遊んでいる。
「こんにちは〜、先生方。どうぞよろしくお願いします。僕の名前はレオ〜ンハルト・ハ
インリッヒです」
「知ってる」
オリバー・ジェームズ・トムが面倒臭そうに答えた。
「あ〜・・・何だか怖いですね。ドキドキします」
どんな診断をされるのか、少しだけビビッているレオンハルト。
「・・・取り合えず、シャツ脱げ」
ジェームズがまず言った。
「おや・・・随分命令口調の医者だな」
レオンハルトが呟いた。
「いいから、早く脱げよ!」
今度はトムだ。
「はいはい・・・分かってますよ、トム君。しかし、僕のシャツにはボタンが多いのです
。それにリボンも・・・」
「ビラビラした服を病院に着てくんじゃねーよ。診断し辛れぇだろ?」
トムは貧乏揺すりして、レオンハルトがシャツを脱ぐのをイライラと待った。
「お待たせ致しました。用意が出来ました。では診察してください、先生方」
上半身裸になったレオンハルトが、「医師団」の方に向いた。
「・・・・・」
「・・・何か?」
「お前・・・結構いい体してんな?」
ジェームズがレオンハルトの上半身を見惚れた。
「フン・・・そうでもねぇよ」
トムは「ケッ!」と舌打ちだ。
確かにレオンハルトは、なかなか鍛え上げられたナイスバディーをしていた。
ヒョロヒョロ体系のオリバーやジェームズやトムとはまるで違う体付きだ。
オリバーが咳払いして聴診器をレオンハルトの胸の辺りに当てた。
続いて、ジェームズとトムも聴診器をレオンハルトに当てた。
「・・・・・・・・」
三人の医師による診断・・・。
三人の医師が、たった一人の患者の胸に聴診器を当てている。
・・・全く馬鹿げた絵ヅラだ。
しかしその横では、ダニエルとルパートが繰り広げる「お医者さんごっこ」が始まっていた。
ある意味、こっちの方が「もっと馬鹿げた絵ヅラ」だった。
「なるほど。ルパート・・・君は風邪です。よし、注射を打ちましょー!」
「よーし、僕も注射打つー!ダンに打つー!」
「あはは♪注射は僕が打つんだよ。ルパートは寝ててね」
「やだモンねーだ!僕が注射係なんだモンねーだ!」
「じゃ、打ちっこしよーか?」
「うん♪」
・・・と、まぁ・・・このくらい馬鹿げた絵ヅラだ。
「あ〜・・・どうですか、先生?僕、何か異常なトコありますか?」
レオンハルトが医師団に訪ねた。
「ほぅ・・・その言い草だと、お前は自分に『異常なトコ』なんかまさかある訳ないって
思ってんだな?」
オリバーが診断書に何やら書いている。
「えぇ。だって僕、食欲も睡眠もバッチリですし」
「残念だけどな、レオ〜ンハルト。お前には病気が見つかったぜ?」
ジェームズが言った。
「え、病気!?何なんです、それは・・・」
「俺が言おう!」
トムが勿体ぶって会話に「間」を作った。
「お前の病気・・・それは『ミュージカル病』だ!」
「えぇっ!?『ミュージカル病』!?何なんです、それ!?」
レオンハルトが大袈裟に驚いた。
「ほら、それだ!『アクション』が無駄に大きいっ!それに、その服だ!レースがビラ
ビラ!それに、『自分の名前を延ばしながら喋るトコ』!間違いなく、お前はかなり重度
の『ミュージカル病』と診断された!」
「そ、そんな・・・」
レオンハルトはヨロヨロと立ち上がり、床にガックリと四つん這いになった。
「ホント・・・こりゃ、相当な『ミュージカル病』患者だな」
ジェームズが笑った。
「ま・・・『薬』出しといてやるよ、レオ〜ンハルト。お大事にな」
オリバーが〆た。
と言う事で、レオンハルトは受付で二週間分の「ミュージカル緩和薬」を貰った。
ちなみに、オリバーが先ほど診断書に書いていた何やらは、診断結果でも何でもなく「
歪んだドラえもんの顔と、のび太には到底見えないのび太の顔」・・・単なる落書きだった。
番外編SSドラマ・・・「メロン」
池照家の居間・・・ちゃぶ台を挟んで、五人兄弟がその中央をジッと見つめている。
「・・・メロン?」
「そう・・・メロンだ」
ジェームズの問い掛けに、オリバーが答えた。
「僕、家でメロン見るの初めて」
「い〜い匂〜い♪」
ダニエルが感激し、ルパートは肺一杯にメロンの匂いを吸い込んでいる。
「どうしたんだよ、コレ?」
トムが聞いた。
「めぐみちゃんの田舎から送られて来た箱の中に入ってたんだ。『みなさんでどうぞ』って」
オリバーが答えた。
「やっぱ持つべきものは、メロンを送ってくれる田舎の人だーねー♪」
ジェームズが嬉しさを表している。
ルパートはまだ「スーハースーハー」と、メロンの匂いを嗅いでいる。
問題のめぐみは、今日ジョニーズの「KARASHI」のコンサートで東京ドームだ。
「で・・・どう切る?」
オリバーがみんなの顔を順番に見渡した。
「え、どうって?普通に5つに切ればいーんじゃねーの?」
「ほぅ・・・お前は球体を寸分狂わず、『普通に5等分に切る』自信があるのか?」
ジェームズにツッコんだオリバー。
「あ、なるほど・・・そういう事ね」
確かに、球体を当分に奇数に切るのはなかなか技術が入りそうだ。
「じゃ、僕が切ってあげよーか?」
「断るっ!」
みんなに一斉に反対されてしまったルパート。
またプゥーと頬っぺたを膨らませて怒り始めた。
ルパートはホント・・・・・兄弟からの「信頼」がとことん無い。
「こういうのはどうだ?一先ず6つに切る。んで・・・最後の1つはジャンケン」
「お、ナイス考え♪」
トムの意見にジェームズが賛同した。
「僕もそれでいいよ」
「俺も」
ダニエルとオリバーも賛同した。
しかし・・・。
「僕はヤダ!」
ルパートだけが納得しなかった。
「だってさー、もしジャンケンで負けちゃったらどーするんだよー!『おまけ』が食べれ
ないんだよ!」
「いーじゃねーか・・・取り敢えずは確実に1つは食えるんだ」
「ヤダー!僕、2個食べたーい!」
「うるせー!我が儘言うな!多数決でお前の負け!6個に切るっ!」
オリバーが長男として、強制的に引導を渡した。
ルパートは自分の意見を無視されてメソメソした。
オリバーは6個にメロンを切り始めると外野が騒ぎ出した。
「おいおい・・・そこ真ん中じゃねーぞ?」
「確かに、もう少し右だ」
「あーっ!左にズレてるー!」
「オリバーのヘタクソ!」
「・・・・・」
それでもオリバーは、全ての声を無視して取り合えず6等分した。
「ジャンケンで好きなトコ取ってこうぜ?意外と・・・この時点でも結構大きさがバラけてる
しな」
「・・・悪かったな」
ジェームズが提案し、オリバーはムカムカしていた。
「じゃ、僕コレがいい!」
ルパートが大きそうな1つを指差して、早速立候補した。
「だから、ジャンケンで決めるって言ってるだろ!」
オリバーが制した。
「じゃ、行くぞ?せーの・・・最初はグー!ジャンケン・ポンっ!」
「ぃよっしゃー!」
ジェームズがガッツポーズをした。
「じゃ、俺コレ!」
「わー!それ僕のー!」
「うるせーよ!俺のだよ」
さっきルパートが指差したメロンが、ジェームズに取られてしまった。
「じゃ・・・僕次コレ!」
「だから、ジャンケンで決めるんだって・・・。ほら、行くぞ?最初はグー!ジャンケ
ン・ポン!」
「ぃよしっ!」
トムが勝った。
「じゃ、俺コレ!」
「わー!それ僕のー!」
「違う!俺のだ!」
トムは、今しがたルパートが差したメロンを取ってしまった。
「ジャンケンに勝てばいいんだよ、ルパート。がんばろうよ!」
「・・・・・」
ダニエルに励まされたが、ルパートは口が尖ったままだ。
涙が溜まり始めている。
「最初はグー!ジャンケン・ポン!」
「・・・・・」
ルパートが泣き始めた。
勝ったのはダニエルだった。
ダニエルは遠慮深そうに、小さめのモノを取った。
「いいんだぞ、ダニエル。お前は勝者なんだ。ホントはどれが欲しいんだ?」
オリバーが聞くと、ダニエルは益々遠慮深そうに「ホントは・・・コレ」と答えた。
「よし、じゃ、お前がそれだ。ほら、ルパート・・・ジャンケンしようぜ?」
オリバーが言ったがルパートは泣いたままだ。
「ジャンケンしないなら、俺が不戦勝で勝ちって事だぞ?いいのか?」
「ヤダ!」
「じゃ、ほら・・・ジャンケン・ポン!」
「・・・ぅわぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ん・・・」
どこまでもジャンケンに弱かったルパート。
オリバーに先を越された。
ルパートは最後、時間を掛けて吟味して、少しでも大きそうな方のメロンを取った。
泣きながらメロンを食べている。
「じゃ、最後のメロンのジャンケンしようぜ?」
とっくに食べ終わったジェームズが提案した。
ルパートは「ここで勝てば、みんなより少しは沢山食べれる」と燃えた。
そして・・・。
「・・・あげるよ、ルパート」
勝者ダニエルは、愛すべき兄に自分が勝ち取ったメロンを上げた。
「・・・要らないモンね」
ルパートは泣きながらそれを付き返した。
「いいんだよ・・・ルパートが食べなよ」
「ダンが勝ったんだもん・・・だからそれはダンのなんだもん・・・僕のじゃないんだも
ん・・・」
「そうだよ、僕が勝者だ。だから、僕がこのメロンをどうにでも出来るんだ。その僕が君
に上げたいんだ」
「・・・ダン・・・」
ルパートは目を涙でキラキラさせながらダニエルからメロンの皿を貰った。
「大好きだよ、ダン・・・」
「えへへ♪」
ダニエルも笑顔だった。
「あ・・・」
ルパートがポロッとそのメロンを畳の上に落とした。
「わーっ!しーちゃんがー!」
たまたまそこにいた「カメのしーちゃん」が、美味そうにそのメロンを食べ始めた。
「ダメー!それ、僕のー!ダメー!しーちゃん、ダメー!」
どこまでも運の無いルパート。
・・・結局、最後のメロンはしーちゃんに食べられてしまった。
番外編SS「もし、宇宙人が登場してきたら・・・」
<オリバー編>
宇宙人「ワレワレハ、ウチュウジンダ」
オリバー「今忙しいんだよっ!後にしてくれ!」
宇宙人、残念っ!
今日は「4」の日で、「喫茶レインボー」は忙しかったのだ。
オリバーは目が「三角形」だったのだ。
故(ゆえ)に、オリバーに相手にされなかった宇宙人。
(カレンダーで「4」の付く日は、近くの「とげぬき地蔵」に日本各地のお年寄りが集
まる日で、「喫茶レインボー」もこの日はそこそこ混むのだった)
<ジェームズ編>
宇宙人「ワレワレハ、ウチュウジンダ」
ジェームズ「馬鹿っ!イイトコ見逃しただろ!」
ジェームズは今、Jリーグサッカーをテレビで観ていたトコだった。
お気に入りのチームのシュートのトコで宇宙人がテレビの前に立ち、いい所を見逃してし
まい、宇宙人は叱られたのだ。
宇宙人、またまた残念っ!
<トム編>
宇宙人「ワレワレハ、ウチュウジンダ」
トム「・・・見りゃ分かる」
宇宙人「・・・・・・・・」
確かに、どう見ても地球人じゃない姿の彼等。
名乗らなくても、誰の目にも「宇宙人」である事は明白だ。
宇宙人・・・・・なかなか「相手」にされない。
宇宙の果てからワザワザ来てるのに、ホントお気の毒。
<ルパート&ダニエル編>
宇宙人「ワレワレハ、ウチュウジンダ」
ル&ダ「ワレワレハ、チキュージンダ」
「会話」成立!
取り合えず、宇宙人と同じニュアンスを真似してみたダニエルとルパート。
更に・・・。
ルパート「ボクハ、ルパートダ」
ダニエル「ボクハ、ダニエルダ」
・・・名乗ってみた。
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