池照家の「シンデレラ」
★キャスト紹介★
・シンデレラ・・・・・池照トム
・継母・・・・・河合エマ
・意地悪な姉・・・・・池照ルパート
・魔法使い・・・・・池照オリバー
・ねずみ・・・・・池照ジェームズ
・王子・・・・・池照ダニエル
・王子・・・・・レオンハルト・ハインリッヒ
<これより本編です>
昔々ある所に、「シンデレラ・トム」と言う娘が居ました。
「おーい、シンデレラ・トムー!」
シンデレラ・トムには、継母(ままはは)と意地悪な姉が居ました。
「何だよ、『意地悪な姉・ルパート』!」
シンデレラ・トムは、継母が「ジャパネット・高田」で購入した、40万円もするマッサ
ージ・チェアーにふんぞり返り、「全身を揉む」の施術を受けながら大変に生意気な態度
で義姉に返事をしました。
「あのねー、『継母のエマ』がねー、掃除のねー・・・」
意地悪な姉は、説明がかなり下手でした。
「無駄にクドいッ!頭ん中でちゃんと話を纏(まと)めてから話せよ!俺は忙しいんだ
!」
シンデレラ・トムは今ケイタイメールを打っていたので、ちっとも暇ではありません。
マッサージが気持ち良くて、たまに「あー」と言ったりしています。
「えっとねー、継母のエマがねー、王子様のお城がパーティーのドレスで、そろそろ準備
が早いから、雑巾は外に干してある新しいのを使ってくれって」
「・・・・・」
「分かった?」
「ちっとも分かんねー」
「んもぅ〜っ!!じゃあ、もう一回だけ言うからね?僕が怒られちゃうんだから・・・。
あのねー、継母のエマがねー・・・」
「ちゃんとシンデレラ・トムに伝えたの!?ど〜しよーもなく、お馬鹿な娘・ルパー
ト!」
継母のエマが現れました・・・いつのもようにイライラしています。
そして口には、彼女のトレード・マークとも言うべき「チュッパチャップス」です。
「今日は夜、お城で舞踏会なの!だからそれまでにシンデレラ・トムは、しっかりと家の
掃除をしとけって話よ!それに、シンデレラ・トム!アンタは舞踏会には連れて行かない
からってそういう話よ!」
「なるほど・・・やっと分かったぜ」
「僕はさっきからそう言ってるよ」
意地悪な姉・ルパートは口を尖らせました。
「お前はちっとも言えてねーじゃねーか!ってか・・・雑巾じゃなくって、クイックル・
ワイパーとかねーのかよ、継母のエマ!」
「『ねー』わよ!」
継母のエマはフンッと言って去って行きました。
彼女の態度にムカムカきてはいけません・・・きっとカルシウムが足りていないのです。
「チッ!全く何にもねー家だぜ・・・。ま、夜になれはこっちのモンだ。邪魔な二人が城
行ってる間、好き放題出来るし・・・」
「・・・・・」
意地悪な姉・ルパートは、まだそこにポケッと突っ立って居ました。
「用件済んだんなら、お前もどっか行けっ!」
シンデレラ・トムに怒鳴られ、意地悪な姉・ルパートはサッと姿をくらましました。
そして、時刻は夜7時・・・。
継母と意地悪な姉・ルパートは綺麗に着飾って、さっさと舞踏会に向かいました。
けれど、出かける間際まで二人は沢山沢山揉めていました。
意地悪な姉・ルパートは仕度がグズで、継母に散々ブツブツ文句を言われていたのです。
「ったく!ホント、何やらせてもノロいんだから・・・。『ドラえもん』なんか、のほほ
んと見てるからよ!どうせビデオ撮ってあるんでしょ!?」
「だってさー、今日は面白くてさぁ〜、のび太がさぁ〜・・・」
「アンタは口と手が一緒に動かないんだから、今は喋んないでくれるっ!」
「・・・チェッ!」
それから継母のエマは、「僕のバック知らない?」と聞く娘に対して、「その辺のテキト
ーに持って行きなさいよ!グズッ!」と言いました。
そして、舞踏会の時間に間に合わないといけないので、家の前でタクシーを拾いました。
ちなみに、意地悪な姉・ルパートがテキトーに持って出たのは「電王バック」でした。
黄色のドレスと電王バックの意地悪な姉・ルパート・・・皆さんの想像通り、それは酷く
似合わない最悪なコーディネートでした。
「最近のガラス・マイペットは落ちがいいぜ・・・」
シンデレラ・トムは大方片付いた部屋を見つめ、満足げです。
「よし!ここまでにして、俺も一杯やるか・・・」
冷蔵庫から缶ビールを出し、それを飲みながらフライパンで簡単なつまみを作るシンデレ
ラ・トム・・・なかなかの手付きです。
DVDをセットし、ふっくらしたソファーにだらしなくふんぞり返って座り、そして二本
目の缶ビールを開けて、今、まさにペペロンチーノにフォークを刺した至福の瞬間・・・。
ボンッ!
「おわっ!」
シンデレラ・トムが驚きました。
丁度、冬限定の「お汁粉の缶」に口を付けた、「魔法使い・オリ婆」が現れたのです。
自動販売機で冬になると売られる「アレ」です。
「婆さん・・・。アンタ、もう汁粉かよ!」
「今年初のお汁粉タイムだ。ずっと待ってたんだ♪俺さ、これのファンで・・・。ところ
でお前、呼ぶタイミングが悪いぞ!俺の楽しいひと時を・・・」
「俺、別に呼んでねぇぞ。一体何の用だよ!?こっちだって、今から飯の時間なんだ」
「俺がここに呼ばれたのは、城の舞踏会にお前が行けるように魔法を掛けてくれって事だ
ろ?」
「だから、頼んでねーんだよ!俺はこれからDVD観ながら軽く晩酌するつもりで・・・」
チューッ!
「ゲッ!ねずみ・・・」
シンデレラ・トムは近くにあった殺虫剤をこれでもかと言わんばかりに、辺り一面に撒き
散らしました。
「ガハッ!ゲヘッ!」
魔法使いとねずみが、オカシな咽せ方の咳をしました。
「やめろって・・・俺だっチューの!!お前を城に運んでやる『馬』になってやる為に
、飯の時間にも係わらず、わざわざ出て来てやったんだっチューの!」
「ジェムねずみ」でした・・・手にはキャラメルの袋を持っています。
「あーーーーっっ!お前、それ・・・俺が食おうと思って隠しておいた・・・」
シンデレラ・トムがジェムねずみの首を〆ました。
「いーじゃねーか・・・だってお前、なかなか食わないからさ」
「さっきくすねたばっかりだ!もう少ししたら食おうって思ってたんだ!」
ジェムねずみは、「田中義剛牧場の生キャラメル」を半分も食べ終えてしまっていました。
「なかなか手に入らないレア商品なんだぞ、それ!ちくしょ・・・返せっ!」
「ケチな野郎だねぇ・・・」
「半分も食っておきながら言うなっ!」
シンデレラ・トムとジェムねずみは、どうやら仲が悪そうです。
「どうでも良いけど、早く立ち位置に付けよ、お前達」
魔法使い・オリ婆が二人に指示を出しました。
「汁粉が口に付いてるぞ、婆さん」
ジェムねずみが親切に教えてやりました・・・なかなか優しいヤツです。
魔法使い・オリ婆は「最後」を楽しむように、ペロリと口の周りを舐めました。
「あのさぁ、俺は舞踏会なんかメンドーだから行きたくねぇんだよ!二人共もう帰ってく
れよ。俺はこれからペペロンチーノを食いながら、DVDで『膿(うみ)ザル』を・・・」
シンデレラ・トムがビールをグビーッと飲んだその瞬間・・・。
ボンッ!
シンデレラ・トムの意見なんか聞かずに、魔法使い・オリ婆は杖を振って、ドレープたっ
ぷりの淡い水色のドレス姿のレディに仕立て上げました。
自分の意見を蔑(ないがし)ろにされたシンデレラ・トムは、思いっきり仏頂面です。
魔法使い・オリ婆とジェムねずみは、ドレス姿のシンデレラ・トムを見つめ、ヒーヒーと
大ウケしています。
しかも、失敬なほど笑っています・・・本当に失礼な二人です。
「元に戻せっ!俺は舞踏会なんか興味ねーんだよ!継母と意地悪な姉が居ねぇ間に、色
々したい事を・・・笑うなっ!」
しつこく笑っているジェムねずみには、より激しく叱咤(しった)するシンデレラ・トムで
す。
「そういう訳にはいかねーんだ。物語はちゃーんと進めて貰わないとな。ほら、表に馬車
を用意したやったから、アレに乗って城の王子のハートをガッチリ射止めて来い!」
「ジョーダンじゃねぇぞ!何で俺が王子のハートを・・・」
「早く行けって!だけど、12時までには戻って来いよ!」
「何で色々制約とか付けんだよ。この時間から行くなら、普通『オールナイト』だろ!?」
「12時までに戻って来ねぇと、魔法が切れんだよ」
「力の無ぇ、魔法使いだぜ・・・。あ、俺の生キャラメル絶対ェ食うんじゃねーぞ、婆さ
ん!仕方ねぇからペペロンチーノはやる。言っとくけど、それ超美味いぞ!」
シンデレラ・トムは自分が作ったスパゲッティーを自画自賛し、飲みかけの缶ビールを持
ちながら、ブツブツと文句を垂れつつ馬車に乗り込みました。
そして、ジェムねずみが変身した馬が引く、若干歪(いびつ)な形のかぼちゃの馬車で渋々
と城に向かったのです。
シンデレラ・トムが城に到着すると、当然もう舞踏会が始まっていました。
「・・・気持ち悪ぃ〜・・・」
顔色の真っ青なシンデレラ・トム・・・どうやら馬車酔いした模様です。
空きっ腹にビールを飲んで、馬車なんかに乗るからです。
自業自得で草葉の陰でグロッキーになっているシンデレラ・トムに、誰かが爽やかに声を
掛けてきました。
「どうしました、お嬢さん?」
「・・・・・」
シンデレラ・トムが振り返ると、華麗な王子スタイルがバッチリ決まっている、レオ〜ン
ハルトがそこに立っていました。
「・・・王子ってお前か・・・」
シンデレラ・トムはガッカリです・・・何となく王子の事が虫が好かないからです。
「城には王子が二人居るのです。弟の王子はほら・・・向こうで、彼好みの赤毛の子と踊
っていますよ」
レオンハルト王子の指差した先には、確かに「皇帝円舞曲」の曲で「マイムマイム」を踊るオ
カシなカップリングが居ます。
間違いなくそれは、意地悪な姉・ルパートとこの国の第二王子のダニエルです。
ダニエル王子・・・意地悪な姉・ルパートとのダンスを本当に楽しんでいます。
彼は、意地悪な姉・ルパートの「若干のチグハグ」なんか、ちっとも気にしていません。
「さぁ、あなたの相手はぜひこの僕が・・・」
「俺に触んな!!」
手を出して来た第一王子レオンハルトの手を、バチンと叩いたシンデレラ・トム。
レオンハルト王子と踊るなんて、真っ平ごめんです。。
「恥ずかしがらなくてもいいのですよ」
「気持ち悪ィから離せって言ってんだろ!」
レオンハルト王子を振り切って、階段を猛ダッシュで駆け下りたシンデレラ・トム・・・
「やっぱり舞踏会なんか来なきゃ良かった」と思っています。
「待ってください、せめてあなたのお名前を・・・」
「お前に名乗る名前は持ち合わせていねぇ!」
シンデレラ・トムの度重なる悪い言葉が神様に聞こえたのでしょうか・・・シンデレラ・
トムは、慣れないハイヒールとドレスに躓(つまず)いて、階段で思いっ切りコケました。
きっと天罰です。
けれど、ウダウダしている訳には行きません。
すぐそこまでレオンハルト王子は迫って来ているのです。
「やべぇ〜・・・このままだとレオ〜ンハルトに追い付かれる・・・・」
シンデレラ・トムは苦肉の策で、脱げてしまった片側の「ガラスの靴」を、レオンハルト王子
目掛けて投げ付けました。
「おっと・・・」
レオンハルトが飛んで来た靴を見事にキャッチし、その靴の匂いを嗅いでいるうちに、シ
ンデレラ・トムは馬車に飛び乗り、家に急いだのです。
多分、レオンハルト王子は「匂いフェチ」だと思います。
そして数日後・・・。
コンコン!
「はぁ〜い♪」
意地悪な姉・ルパートが、疑いもなくドアノブに手を掛けました。
「馬鹿やろっ!ドアを開ける前に、まずは相手を確認するんだ!」
シンデレラ・トムが意地悪な姉を制止し、「誰だ?」とドア越しに尋ねました。
なかなか「世の中の物騒」を分かっている、ニュース通のシンデレラ・トムです。
「ドラえもん」ばかり観ている、アニメファンの意地悪な姉・ルパートとは違うようです。
「城から参った者です」
ドアの向こうから聞こえたのは、何やら疑わしいジジイの声でした。
「城の人間と係わった覚えは一切無い!こっちには用が無いから帰れ!」
シンデレラ・トムは、城からの使いの者を門前払いしました。
メンドーが嫌いなシンデレラ・トムは、メンドーな事が起こりそうな予感には鋭いのです。
「えー!?可哀想だよ、入れてあげようよぉ・・・」
意地悪な姉・ルパートが老人を気の毒がりました。
しかしそれは、何やら「手土産を持っているかも♪」と期待しての事です。
意地悪な姉は甘い物が好きでしたので、きっとケーキか何かを貰えると思ったのでしょう。
「じゃ、いいぜ。でも、お前がヤツの相手をしろよ?俺は今から昼飯の準備があるんだ」
「・・・・・」
「・・・何だよ?」
「僕一人じゃ、きっと上手にお話を聞けないと思うよ・・・」
「・・・・・」
意地悪な姉・ルパートは、唇をちょっと突き出して上目遣いをしました。
「持ち前の可愛らしさ」をビシバシとアピールしています。
意外にも、なかなか「姑息(こそく)な手」を使う姉のようです。
「ったく・・・しょうがねぇヤツだ。おい、ジジイ!5分で帰れよ!」
先に帰り時刻を述べて、シンデレラ・トムはお城から来たと言う人間を家の中に通してや
りました。
何やかんや言っても、家族には甘いシンデレラ・トムのようです。
「・・・何の用だよ、ジジイ」
シンデレラ・トムはドアを開けた瞬間、相手をヤンキー座りで威嚇(いかく)しました。
城からの使いと言う「執事のダンブルドア」が、恭(うやうや)しく「ガラスの靴」の片方
を、フカフカのクッションの上に置いて戸口に立っていました。
「この靴の持ち主を探しております」
「・・・探してどうする?」
「王子の妃に・・・」
「気の毒だけど、それ、うちじゃねーや。他を当たってくれ!」
「・・・・・」
意地悪な姉・ルパートは、そんな嘘がぺラペラ出てくるシンデレラ・トムを、賞賛とも軽
蔑とも付かない独特の表情でジッと見上げました。
「いや・・・僕の鼻に間違いがなければ、この靴の持ち主はあなただ」
実はレオンハルト王子が一緒に付いて来ていたのです。
シンデレラ・トム・・・まんまと騙(だま)されました。
「彼の足の匂いとこの靴の匂いが一緒なら・・・間違い無いよ、爺。その時は彼を一緒に
城へ連れて帰る」
「何っ!?」
シンデレラ・トムは、その一方的な考えが腑に落ちません。
「じゃあ、僕もルパートを連れて帰るー!」
更には、弟のダニエル王子までもが一緒でした。
「あー、ダニエル王子だー!久しぶりー♪」
意地悪な姉・ルパートとダニエル王子は、キャッキャッと再会を喜んでいます。
執事のダンブルドアは、サッとシンデレラ・トムの足からソックスと靴を取り去ると、レ
オンハルト王子にクンクンと匂いを嗅がせました。
「馬鹿、止めろ・・・/////」
「間違いないよ、爺。彼だ!」
「間違いだ!俺はそんな靴の事は・・・」
シンデレラ・トムは悪あがきしています・・・よほど嫌なのです。
「皆の者―!出あえー!」
爺の指示により、後ろに控えて居たマッチョな男達がシンデレラ・トムを担(かつ)ぎまし
た。
「ちょっと・・・うちの娘を城に献上(けんじょう)するからには、私に何か報酬(ほうし
ゅう)は無いの?」
継母のエマが玄関先に出てきました・・・またチュッパチャップスを舐(な)めています。
「何をお望みですかな?」
爺が聞きました。
「私好みの『いい男』!」
「承知いたしました。では、彼を!」
マッチョ男の一人が、魔法使い・オリ婆を玄関先に引っ張ってきました。
「アイテテテ・・・何なんだよ。俺は、これから大学芋を・・・」
「・・・素敵♪」
どうやら魔法使いは、継母のお眼鏡に適(かな)ったようです。
そして、嫌がるシンデレラ・トムと意地悪な姉・ルパートは城で王子達と・・・魔法使い
・オリ婆は継母のエマとこの家で、ずっ〜と暮らしたのであります。
みんなが幸せだったかどうかは分かりません。
ちなみに・・・シンデレラ・トムは、魔法使い・オリ婆に後々手紙を出しました。
「何で魔法が12時に切れたのに、城に残してきた靴はそのまま残っていたんだ!?」
魔法使い・オリ婆は、「その質問には一切お答え出来ません」と返事を出し、全てをうや
むやにしました。
エンド 「オーロラ5★」目次へ