池照家の「花咲か爺さん」
★キゃスト紹介★
花咲か爺さん・・・・・池照ダニエル
花咲か爺さんの妻・・・・・蒲生めぐみ
隣の意地悪爺さん・・・・・レオンハルト・ハインリッヒ
隣の意地悪婆さん・・・・・河合エマ
犬・・・・・池照ルパート
<これより本編です>
ある所に、ダニエル爺さんとめぐみ婆さんがおりました。
二人は大変仲睦まじく、しかも優しい夫婦でした。
二人には、ルパートと言う名前の犬がおりました。
「ここ掘れ、ワンワン!ここ掘れ、ワンワン!ねぇねぇ、僕さぁ〜、『ワンワン』って言う
の飽きたから、たまには『ニャーニャー』とか言ってみたいんだけど?」
「・・・だめ。ルパートは犬なんだから『ワンワン』じゃなきゃおかしいだろ?」
「世界の中にはぁ〜、ちょっこしくらい居るかも知れないじゃ〜ん、『ニャーニャー』って
鳴く犬〜!」
「・・・居ないよ、そんな犬」
ダニエル爺さんも、流石に今ばかりはルパートの発言に同調出来ません。
ルパートと言う犬は、確かにちょっと我が儘です・・・そして、馬鹿です。
ルパートは自分の不満を、今度は「ブーブー」で表現し始めました。
「おい、ルパート!『ワンワン』だろ!」
「フンッ!ブーブー!」
「ワンワン!」
何だか・・・ダニエル爺さんの方がよほど「犬」っぽいです。
この二人、完璧に配役に間違いがあったような感じがします。
とにかく、今回はもうお話が進んでしまっています。
と言う事で、このままお話を進めましょう。
ルパートが「ここ掘れ、ワンワン!」と吠えた所を実際掘ってみると・・・あら不思議!
大判小判がザ〜ックザク!
「ワォッ!やるね、ルパート!」
「えへへ〜♪」
ルパートは飼い主のダニエル爺さんに褒められて至極ご満悦です。
「・・・ほほぅ、あのワンちゃんは使えますね」
隣のレオンハルト爺さんがその様子を見ており、ある日ルパートを連れさってしまいました
。
「やめてよー!ダンのトコに帰してよー!」
ルパートは床にひっくり返ってバタバタ暴れました。
「ど〜れ、可愛いバンビちゃん(本編参照)にはお菓子あげましょうか?」
「え、お菓子!?わーい♪」
ルパートは高価なお菓子に釣られ、意とも簡単にレオンハルトの家の犬になってしまいまし
た。
「さぁ、バンビちゃん!どこに小判が眠っているのかな?まぁ・・・僕は本来、こういうモ
ノに興味はあまり無いのですが・・・」
レオンハルト爺さんは役柄で仕方なく「悪いお爺さん」になっているに過ぎません。
彼は本来なら途轍もない金持ち・・・今更「お金」が欲しいとはあまり思って無いのです。
むしろレオンハルト爺さんは、お隣のめぐみお婆さんと親密な付き合いが出来ないか・・・
と言う、ちょっと破廉恥な方に興味があります。
「ほらっ!ちゃんと小判の在り処を教えなさいよ、馬鹿っ!」
レオンハルト爺さんには奥さんが居ました・・・エマ婆さんです。
この婆さんは食わせ者です・・・相当な悪魔です。
レオンハルト爺さんから貰ったお菓子を食べながらプレステをして遊んでいたルパートを見
付けると、早速扱き使い、足蹴にし、馬鹿呼ばわりし・・・散々です。
「『馬鹿』って言った方が馬鹿なんだモンねーだ!」
「私が馬鹿な訳ないじゃないのよ!このウルトラ馬鹿っ!」
「うわ〜〜〜ん、エマがぁ!エマが僕の事イジメルぅ〜〜・・・レオンハルトく〜ん!」
「あの外人爺さんは、アンタの叫び声くらいじゃやって来ないわよ!」
エマ婆さんは高笑いです。
しかし確かにその頃、レオンハルト爺さんはめぐみ婆さんと縁側でお茶タイムしてました。
「さぁ、早く小判の場所教えなさいよ!」
「・・・じゃ、その辺掘ってみればいーじゃん?」
ルパートは適当な事を言いました。
「ここ?ここなのね?ど〜れ・・・」
エマ婆さんはうんしょうんしょ掘っていましたが、「どうして私だけが掘らなきゃいけない
のよ!アンタも手伝いなさいよ!」とルパートの事も使い始めました。
「僕、掘りたくな〜い」
「我が儘ばっか言ってるとぶつわよ!」
「ヤダよーだ!」
「じゃ、掘るのね!私は休憩するわ。生ドーナツがあるし〜♪」
「えー!僕も食べたーい!」
「アンタに食わせる生ドーナツがあると思ってんの!?アンタなんか、残飯で充分よ!ほら
、ちゃんと掘りなさい!」
「ブーブー!」
「ふ〜ん・・・ブタならむしろ都合が良いわ。夕飯の材料になるし♪」
「僕、犬だモン!」
「あら、今『ブーブー』って聞こえたけど?」
「違うモン!僕、犬だからワンワンだもん!」
「そ!犬なら犬らしく畑を掘れって感じよ!あ〜、生ドーナツ超美味しい♪」
「・・・エマなんか僕、嫌い」
「何か言った?」
「・・・何でも無いモンね。あ、何か出て来た・・・」
「どれっ!」
エマ婆さんが生ドーナツを放り投げて、早速穴の中のモノに食い付いてきました。
ルパートはその辺に放り投げられた生ドーナツを拾ってフーフーし、「3秒ルールでセーフ
♪」とか何とか言いながらパク付いています。
「・・・何よ、コレ?」
「あはははは♪エマの答案用紙だー!あははは♪15点だって〜♪あははは♪馬鹿みた
〜い♪」
「ムカつく犬ね・・・死になさいっ!」
「わーーーー・・・」
可哀想な犬ルパート・・・エマ婆さんのお怒りを買って、殺されてしまいました。
「酷いじゃないかぁ〜、レオンハルトく〜ん!」
ダニエル爺さんが大泣きです。
可愛い可愛い自分の愛犬を殺され、ボタボタ涙を零しています。
「すいません・・・まさか僕の妻がそんな事をしてしまったなんて・・・」
「だってレオンハルト君ってば、僕の奥さんと呑気に縁側でお茶なんか飲んでるからだよ!
んもうっ!どーしてくれるんだよー!」
「すいません、ダニエル爺さん・・・」
レオンハルト爺さんはションボリです。
そこへ・・・。
「あ、ダン?僕、ホントは生きてるよ?」
「・・・・・」
ダニエル爺さんの腕の中で死んでる「はず」のルパートが、ダニエル爺さんに向かって話し
掛けました。
一瞬対応に困ったダニエル爺さんですが・・・「無視」と言う事でその場を切り抜けます。
「可哀想な、ルパート・・・こんな姿になってしまって・・・」
「ダン?僕生きてるってば・・・ホントはね」
小悪魔的な笑いでダニエル爺さんに話し掛ける、相変わらずなルパート・・・。
「・・・ねぇ、黙って死んでてくれない?ここは物語の中でもかなり感動的ないい場面なん
だからさ」
「だってさ〜、僕死んでないモ〜ン。生きてるモ〜ン♪」
「分かってるよ、そんな事。でもお芝居の中ではルパートは死んだ事になってるの!だから
喋っちゃダメ!」
「チェッ!」
ルパートは仕方なく黙りました。
「・・・庭に穴を掘って埋めてあげようね、ルパート」
ダニエルお爺さんが言いました。
「そんなのヤダー!穴なんかに僕を埋めないでよー!ダンの馬鹿―っ!」
「だーかーらー!これはお芝居なんだってば!」
「だって、お芝居でも穴に埋められたくないんだモ〜ン!」
ダニエル爺さんの心の声が聞こえてきそうです。
・・・この馬鹿っ!・・・と。
「・・・分かったよ。じゃ、埋めた事にして、そっちでお芝居見ててよ」
「オッケー♪」
「・・・・・」
全く調子が狂うな・・・とダニエル爺さんは思いました。
ルパートの墓の横には(「僕のお墓とか言わないでよー!」byルパート)、雨風を避ける為
に木も植えられました。
その木はどういう訳か驚異的な早さで育ち、あっと言う間に大木となりました。
そしてある日、ダニエル爺さんの夢の中に死んだはずのルパートが「その木で臼を作れ」と
現れたのです。
(ル「僕、ホントは生きてるもんねーだ!」)
(ト「お前、ホントいい加減にしろよなっ!」)
(オ「ルパート!お前は煎餅でも食って大人しくしてろっ!」)
(ル「僕、おせんべー嫌〜い」)
(ト「我が儘ばっか言ってんじゃねー!」)
(ル「うわぁぁぁ〜〜〜ん、トムがぁ!トムがぶったぁ!オリバぁ〜!」)
(オ「ったく・・・うるせぇなぁ」)
(ジ「ダニエル、こっちの事は気にしないで芝居、先に進めろ」)
ダニエル爺さん・・・早くこのお芝居を終えたくて仕方ありません。
とにかく、お話の再開です。
「んまぁ〜・・・こりゃ良い臼拵えたなぁ〜、お爺さぁ〜ん。ど〜れ・・・んじゃ、私〜こ
れでちょっこら餅でもこさえてみっかなぁ〜」
めぐみ婆さんはすぐ「食」に想像が走ります。
「臼」と言ったら・・・やはり「餅」です。
めぐみ婆さんは「よっこらしゃーのしゃ!」と言いながら餅を搗(つ)きました。
すると・・・。
「あンら〜・・・?お爺さぁ〜ん・・・臼の中から小判が〜・・・」
「うわっ、ホントだ!」
「あらら〜〜・・・どうしよーもねーなぁ。これじゃ餅が食えねぇ〜じゃねぇの〜」
「・・・・・」
ダニエル爺さんとめぐみ婆さんは、小判が出て来た時の見解がちょっとばかり違うようです
。
「・・・なるほど、あの臼が『小判製造マシーン』なのね?フフ、奪ってやるわっ!」
エマ婆さんは双眼鏡でお隣さんを覗き見して、情報を得ました。
「頼もうー!アンタん家のその臼、私が貰い受けたわっ!」
呆気に取られているダニエル爺さんとめぐみ婆さんを余所に、エマ婆さんが臼を掴みました
。
「ぐ・・・重たい・・・」
・・・臼は持ち上がりませんでした。
そりゃそうです・・・エマ婆さんがヒョイと持てるような臼では無いのです。
「エマちゃん、欲しいのけ、この臼?んじゃあ、あげます〜。けンど、中の餅だけはやれね
〜」
「餅なんかどーだっていいのよ!とにかく、アンタ!私の家までこの臼を運んで頂戴!」
「分かりましたぁ〜」
めぐみ婆さんはヒョイと臼を担ぎ、お隣さんまで配達してやりました。
「ふふふ・・・んじゃ、早速小判でも出してみようかしらね。よっこらしょっと・・・あら
?」
エマ婆さんが杵で臼を搗くと・・・。
「ゲッ!」
「あははははは♪またエマの答案用紙が出て来た!今度は8点だってさ!あはははは♪
エマって、ホント馬鹿みた〜い♪」
観客席でお芝居を見ていたルパートは大ウケです。
「・・・もう一遍死にたいの、アンタ?」
エマ婆さんが威嚇しました。
「チッ・・・何なのよ、この臼!こんなモノ燃やしてやるわ!」
エマ婆さんは臼を斧で叩き割り、薪にしてして燃やしてしまいました。
「酷いじゃないかぁ〜、レオンハルトく〜ん!」
ダニエル爺さんはまた泣いていました。
この男、どうやらすぐ泣きます。
「返す言葉もありません。僕の妻が借りたモノを壊して燃やしてしまうなんて・・・」
レオンハルトの手の中には灰になった臼の残骸が在りました。
「とにかく、これはお返しします」
「こんな状態になっちゃったらどうしよーもないじゃないか。んもうっ!」
「すいません・・・あ、今日もお綺麗ですよ、めぐみさん」
「ありがと〜ございます〜」
二人は何だかいい雰囲気です。
ダニエル爺さんは、ジロリとそんな二人を睨みました。
「チッ・・・何なんだよ、この芝居」
トムが観客席で舌打ちした。
「おい、トム・・・お前そろそろ出番じゃないのか?」
「あ、そうだった・・・」
トムは舞台の袖にスタンバイする。
ダニエル爺さんが灰を貰って帰った夜、また夢を見ました。
「この灰、枯れた桜の木の下に撒くといいんじゃな〜い?」
声は犬のルパートです。
ダニエル爺さんは次の日、枯れた桜の木にその灰を撒いてやりました。
「枯れ木に花を咲かせましょう!枯れ木に花を咲かせましょう!」
すると・・・あら不思議!
「あンらぁ〜・・・お爺さ〜ん。綺麗な桜が咲きましたよ〜」
「ホントだ・・・凄いっ!」
「おい、そこの者!」
ダニエル爺さんにいきなり話し掛けて来た態度のデカイ人物は大名様です・・・トム大名様
です。
「なかなか見事じゃん。良いモノを見せて貰ったぜ・・・特別に褒美とかやってやってもい
いぜ?」
「ははーっ!有り難き幸せ〜」
ダニエル爺さんはトム大名様に深々とお辞儀をしました。
それを見ていたのはまたもや隣のエマ婆さんです。
って言うか、この婆さん・・・・・いつもお隣さんを覗き見しているようです。
「チッ!まんまと上手くやったわね、あの爺さん・・・あの灰を奪ってやる!およこし!」
エマ婆さんはダニエル爺さんの手の中から灰を全部奪ってやりました。
「ほ〜っほっほっほっほっ!見るがいいわ、大名!私にだって桜くらい咲かせられるのよ
!」
が・・・。
「イテっ!」
風向きが急に変わり、エマ婆さんの撒いた灰がトム大名様の目に入ってしまいました。
「痛ぇじゃねーかよ、このババァっ!大名の俺の目に灰飛ばすたぁ、いい度胸じゃねーか?
あぁんっ?」
「たまたまでしょ!アンタもそんなトコいるからよ!」
「・・・え?」
エマ婆さん・・・大名様にもタメ口です。
しかも、逆キレです。
「そ〜ら!桜よ、咲いてごらん!」
エマ婆さんが物凄い量の灰をその辺に撒き散らせました。
「イテーッ!」
「ゲッ・・・」
今度は観客席の「愛するオリバー」の目を直撃です。
これには、流石のエマ婆さんもまずいと思ったようです。
「ご、ごめんなさい、オリバー・・・大丈夫?」
「イテテテテテ・・・目が開けられん!誰か、目薬・・・」
めぐみ婆さんが薬箱の中から目薬を持って来てオリバーに差し出しました。
しかし、灰の威力はかなり強力です・・・オリバーは物凄い赤目で人相が変わってしまって
しまいました。
「・・・あ、そう言えば私、宿題があったんだったわ。じゃ」
エマ婆さんはトンズラ扱きました。
重大な責任になると逃げるエマ婆さん・・・いえ、エマはやはり最悪な性格です。
ここで勿論、お話は終了です。
「どうだろ、あの態度・・・」
ダニエルはホトホト呆れた。
「僕知ってるー!今のエマみたいなあーいうのってさぁ〜、『二個を追う者は一個も食べれ
ず』って言うんでしょー?僕、頭イー♪僕、天才♪」
「・・・は?」
ルパートが何だか頓珍漢な事を言った。
この男、相変わらず全く意味不明である。
やはり「キング・オブ・馬鹿」の称号は、依然として彼である。
「って言うか・・・マジ眼科行った方がいいかも知れないぞ、婆さん?その目、リアルにヤ
バい・・・」
ジェームズが心配した。
「かな?じゃ、そうするわ・・・」
オリバーはトムのバイクの後ろに乗り、一番近くの眼科へ直行した。
向こうの方では、あまり「我関せず」のレオンハルトとめぐみが、呑気にお茶飲んで煎餅食
ってマッタリしていたし、ルパートはダニエルに「じゃ、今度は僕がお爺さん役ねー?」と
KY発言をのたまっていた。
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