池照家の「さるかに合戦」
★キャスト紹介★
かに・・・・・レオンハルト・ハインリッヒ
さる・・・・・池照トム
かにの子共達・・・・・池照ダニエル
臼・・・・・蒲生めぐみ
蜂・・・・・河合エマ
栗・・・・・池照ジェームズ
牛の糞・・・・・池照ルパート
<これより本編です>
「え〜・・・今回は『さるかに合戦』に挑戦だ。みんな、話は勿論知っているだろ?」
オリバーが兄弟の顔を一通り見渡した。
(そこには、エマ、めぐみ、レオンハルトの姿もある。エマは尽かさずオリバーに色目
を使った。勿論オリバーは、それには気付かないフリをした)
「確か、『おにぎり』が転がるお話だよね?」
「違うよ、ダン。泥の船にたぬき乗せて殺しちゃう残酷なお話だよ」
「・・・二人共違う」
オリバーが、ダメな下の弟二人に溜息を吐いた。
「要はだな・・・ある所に『かに』が握り飯持って居た訳よ。で、その飯が欲しくて『さ
る』が、自分の持ってた『柿の種』と交換しようって言うんだ」
ジェームズが昔話を始めた。
「で、『かに』の飯と『さる』の種は交換されて・・・」
「あははは♪何かそれって『かに飯』みた〜い!」
「そうだね、ルパート!何だか美味しそうな名前だよね♪」
四男と末っ子が笑っている。
「聞けっ!」
オリバーとトムが、喧しい二人の弟達に一発ずつゲンコツを落とした。
(エマ、尽かさずそれをプッと笑う)
「痛いでしょー、んもぅっ!頭ぶったら馬鹿になっちゃうでしょー!」
「何度も言ってるけどな、お前は元から馬鹿だっ!」
ルパートの抗議にトムが短く応えた。(特に「馬鹿」に比重を置いて喋った)
「ねぇ、ダ〜ン〜・・・」
ルパートが尽かさず弟に、甘ったれて助けを求める。
(「言い付ける」と言った方が当たっている)
「こらー、トムっ!ルパートを『馬鹿』って言うなっ!」
ダニエルは愛する赤毛の兄の為に、トムに太刀打ちした。
「馬鹿は馬鹿だろ!そういうお前も充分馬鹿だけどな!」
「ルパァ〜トォ〜・・・」
今度はダニエルが兄に甘えた。
「ダンは馬鹿じゃないモンねーだ!トムなんか『ベー』だ!」
ルパートの太刀打ちなど・・・所詮この程度だ。
「ほぅ〜・・・」
トムに大したダメージも与えず、彼のファイトに火を注いだだけに終わった。
「痛い痛い痛ぁ〜いっ!」
トムがルパートのこめかみをグリグリ攻撃した。
「やめろ、トムっ!ルパートを離せ!」
「お前にはこうしてやる!」
ダニエルの唇を摘まんで、ギューッと引っ張ったトム。(色々大人気ない)
「イデデデーーーッ!」
「うるっせぇっ!俺の話を聞けぃっ!」
ジェームズがトムとルパートとダニエルの頭に一発ずつ、最大級のパワーで「グー」をお
見舞いした。
「っ・・・」
トムは髪が短かったので、特に痛かったようだ。
ジェームズは淡々と次を話し始めた。
「でな・・・『かに』は交換した種を、家に帰って早速土に植えた訳だ。『さる』も家に
帰って、とっとと飯を食った。で、柿が実際に大きな木に育つと、『かに』は木に登れな
いからその実を取れない」
「馬鹿な『かに』・・・」
エマがまたプッと笑った。(彼女の笑いは、大体全て「失笑」だ)
「ですね・・・最初から『かに』は『さる』と物々交換なんかしなければ良かったのに・
・・」
「・・・・・」
エマとレオンハルトの見解を、今は無視したジェームズ。
「で、『さる』は『かに』に『俺が取ってやろう』と言って木に登った。が、自分ばっか
し食っちゃって、下で待ってる『かに』には柿を落としてやらない。終いには、『渋柿』
を落として、『かに』は死んじまうんだ」
「・・・・・」
ダニエルとルパートが、話の結末に酷くショックを受けた顔をしている。
彼らは「世の理不尽」を知って、言葉が無いようだ。
「『かに』は死ぬ前に子供を産んでた。で、そのガキ共が親の恨みを晴らそうと、仲間を
募って『さる退治』に立ち上がったって訳だ」
「当たり前だよ!僕だって・・・もしそんな事されたら、『さる』を放っては置けない
よ!」
いつも単純なダニエルが、俄然燃えた。
「僕だって!」
ルパートは唯単に、調子良くダニエルのそのアイディアに乗っかった。
「で、『かに』の子供達は、名乗り出てくれた『臼』、『蜂』、『栗』、「牛の糞」と共
に・・・」
「あははははははははは♪『牛の糞』だって!」
「へ〜んなの!牛のうんちなんか、何も出来ないのにさぁ〜。あはははははははははは
♪」
ダニエルとルパートは大笑いだ。(エマも肩を震わせ、ヒクヒク笑っている)
「実際、そういう話なんだ」
オリバーが言った。
「フン・・・大体、牛の糞だってお前らよりは利口だぜ」
トムは毎度の事ながら一言多かった。
「僕らが牛の糞より馬鹿な訳ないだろ!勝手な事言うなよ、トム!」
「そーだよ!トムの言う事なんか信じないモンねーだ!うんちは所詮うんちだよ!」
「俺が嘘言ってると思ってんのかよ?あぁっ!?」
「イデデデデデデーーーーーーーーーーッッ!」
トムは弟二人に技を仕掛けた。
「・・・勘弁してくれ」
オリバーがうるささに耳を塞いだ。
「で、配役だ。誰が何をやる?『かに』と『さる』、『かにの子供達』、『臼』、『蜂』
、『栗』、『牛の糞』・・・」
「仕方ないから、僕『栗』でいいや」
ルパートが腑に落ちなさそうに『栗』を選んだ。
「ってか、何が『仕方ない』んだよ。勝手に『イイトコ』取りしてんじゃねぇよ。お前な
んか『牛の糞』で充分だぜ!」
トムのその言葉にエマが大笑いだ。
「違うモン!僕、うんちじゃないモン!トムはいっつも僕達に意地悪ばっかするから、ト
ムこそ牛のうんちで充分なんだよ!」
「意地悪じゃねぇだろ!お前らが揃いも揃ってアホだからだ!アホは、牛の糞で充分だ!」
「やだモン!僕、牛のうんちなんか・・・うんちなんか嫌だも、ん・・・」
ルパートがメソメソし始めた。
「泣かせるなよ、トム・・・」
オリバーが面倒臭そうに、ルパートの頭をヨシヨシした。
「だって、こいつがよぉ〜・・・」
「トムは意地悪だから『さる』だよ!」
ダニエルがルパートの変わりに仕返しした。
「はははは♪よしっ、じゃあ、取り合えず『さる』はトムに決定!」
「何で俺が『さる』なんだよ!『さる』なんかごめんだ!」
「何を仰る、トム君。お前、少し前の『十二支』でも確か『さる』やったじゃん!」
「あぁ・・・あのトム君の『さる』は素敵でした♪」
ジェームズの言葉にレオンハルトが乗ってきた。
「あの時はあの時だ!今は嫌だ!ってか、ビジュアルとして、『臼』はめぐみだな」
トムがニヤリとした。
「私は何でもいいですよぉ〜」
めぐみはあまりみんなの仲間に入らず、せんべいを食べながらお茶を飲んでいた。
「よし、じゃあ、めぐみちゃんは『臼』ね。決定!」
「・・・あと、何が残ってるって言った?」
エマが確認した。
「『かに』、『かにの子』、『蜂』、『栗』・・・」
「おぃ、『さる』はどうした!?俺じゃねぇぞ!」
トムが訂正した。
「牛のうんちだって、僕じゃないからね!」
ルパートも怒った。
「いいのよ!一旦決まったんだから、アンタ達はそのまま決定!」
「嫌だ!」
トムとルパートが大憤慨だ。
「だったら、俺、『さるかに合戦』なんかやらねぇ!」
「僕だって、やらないっ!」
二人共ソッポを向いてしまった。
「でも・・・僕さ、ルパートのうんちだったら可愛いと思うよ」
「・・・えっ!?」
まさかのダニエルの言葉にみんなが驚いた。
みんなが奇妙な顔でダニエルを見つめる。
とにかく・・・ルパートだったら何でもアリのダニエルなのだ。
「え〜・・・そうかなぁ〜・・・♪」
・・・馬鹿なルパート。
彼は、オダテに弱かった。
「・・・ダンがそう言うんなら、僕やってあげてもいいよ、うんち・・・」
「きっと世界で一番可愛いうんちだよ!」
「わぁ〜い、やったぁ〜い♪」
「・・・・・」
みんなは、ルパートが馬鹿でホント助かったと言うか、ある意味気の毒と言うか、何と言う
か・・・。
まぁ、取り合えず「うんち役」を了承してくれたのだし、「良し」とした。
「って訳で、トム、お前もさる『決定』な?」
トムも流石に、「うんち」よりはマシな「さる」で納得した。
「ねぇ・・・私、『蜂』っぽいと思わない?」
エマが自分を売り込んできた。
「・・・いいんじゃない?」
ダニエルがすぐに賛成した。
「エマはいつも僕とルパートにキツイ事言うから、確かに『蜂』っぽいよ」
「何ですって!?」
エマがキツイ睨みをダニエルに効かせた。
ダニエルはサッとオリバーの後ろに隠れた。
「『かにのガキ』はダニエルでいいんじゃないか?コイツ、チビだし」
「『チビ』って言うな!」
ダニエルの禁句ワードは相変わらず「チビ」だった。
ダニエルに睨まれたジェームズ。
「あとは、『かに』と『栗』か・・・あれ?一人余るな?」
「あ、じゃあ俺、ナレーション」
オリバーが手を上げた。
「ま、いっか。おい、レオ〜ンハルト・・・お前どっちがいい?」
ジェームズが聞いた。
「そうですね・・・『栗』だと、トム君に意地悪しなくちゃいけないので、じゃあ僕は『
かに』で」
「そうか、じゃ、俺が『栗』だな。ほら、決定だ!」
ジェームズが、パンッと一回だけ手を叩いた。
「ねぇ、じゃあ、『おやつ』にしよーよ!」
「うん♪レオ〜ンハルト君が持って来てくれたケーキ食べようよ♪」
ダニエルとルパートが喚いた。
「あそこの高いのよ・・・ママが値段見てビックリしたって言ってたもの・・・」
エマがレオンハルトの「ナリ」を一通り上から下まで見渡した。
レオンハルトは、ケーキの他に花束も持参で駆け付けた。(「かに」になる為に?)
「昔から良く知っている洋菓子店なのです。だから多少はサービスも受けられると言うか
・・・。めぐみさん。沢山召し上がってくださいね」
「ありがと〜ごさいますぅ〜。じゃ、私ぃ〜、お茶でも入れてきますね〜」
「おい・・・コーヒーとか紅茶とか、そういうモンは無ぇのかよ?!」
立ち上がっためぐみにトムがほざいた。
「無ぇよ!うちは、元から無ぇの!そういうの!」
「なぁ、オリ婆・・・店から何か持って来いよ」
「何で、俺がお前の指図を受けなきゃならない。あぁっ!?」
「・・・チェッ!」
流石のトムも、長男には形無しだ。
エマはその様子を見て、クスッと笑っている。(とことん、性格に問題ある彼女だ)
「あ、僕さ、今日の宿題で分かんないトコあんだよね。オリバー見てくれる?」
「俺に分かるもんだったらな・・・取り合えず持って来いよ」
「うん!」
ダニエルが二階に上がっていった。
「あのね、僕はね、今度の『美術展』に学校推薦貰ったの♪」
「何っ!?ホントか、それっ!?」
ルパートの報告に、みんなが驚いた。
ルパートはニコニコと満面の笑みで胸を張ってる。(彼、今、「オードリーの春日」がブ
ームらしい)
「お前はなぁ・・・時々、ズバ抜けてスゲェトコあるからなぁ・・・」
ジェームズも感心している。
「素敵ですね・・・どちらで開催ですか?」
レオンハルトが聞いた。
「東京ドーム!」
「えっ!?」
「なぁ〜んちゃって・・・『上野の森美術館』だよ」
「・・・俺達相手にジョークかますたぁ、いい度胸じゃねぇか・・・」
トムがルパートを睨んだ。
ダニエルがワーワー騒ぎながら二階から降りてきた。
「何だよ、うるせぇな・・・」
「ゴ、ゴ、ゴ・・・」
「何だよ・・・何、ドモッてんだよ?」
「ゴ、ゴキブリっ!」
「何ぃーっ!?」
オリバーがどこからとも無く「ゴキ・スプレー」を持参し、それを両手に構えた。
「早いじゃないか、まだこの時期だぞ!?」
ジェームズも立ち上がった。
「奴ら、一匹居たら、十匹は潜んでるって言うからな・・・どこだ!殺すっ!」
「素敵・・・戦闘的なオリバー♪」
エマが早速写メし始めた。
「みなさ〜ん、お茶が入り・・・」
「そんなの後っ!それどこじゃないっ!」
「あのぅ、僕はまだ『ゴキブリ』を見た事が無いので、ちょっと見せて貰えますか?」
「アホかっ!」
レオンハルトにツッコンだトム。
何やら喧しくなってしまった・・・。
二階では、ドタバタしながら男共がゴキブリ退治に精を出している。
「エマちゃん・・・今のうちにケーキいただきましょうか〜?」
「・・・そうね」
大きな箱に入った、沢山の高級ケーキ・・・。
エマとめぐみはワイドショーを観ながら、一番高さそうなケーキから順番に手を付けた。
「何・・・あの俳優、また『浮気』したの!?大した顔じゃないくせに・・・」
「優しいらしいですよ、凄く・・・」
「男は顔よ!ま、優しいに越した事はないけど・・・」
二人は「芸能人」を肴に文句を垂れながら、既に3つ目のケーキだ。
結局その日、「さるかに合戦」所ではなかったとさ。
チャンチャン♪
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